基幹業務CORE BUSINESS
調剤室業務 概要
当院は電子カルテシステムを導入しています。病棟、診察室で医師が処方入力したものを、薬剤師は電子カルテを用いて、患者個々の病態や検査値、処方歴等を確認し調剤前処方監査を実施します。
処方内容に疑義がある場合は、医師に疑義照会し、修正を依頼します。処方内容に問題が無ければ処方箋を発行します。処方監査を支援するシステムを導入しており、重複薬剤、相互作用などが自動的にチェックされます。処方箋発行後、散薬、水薬監査システムや自動錠剤分包機、薬袋発行機にデータが転送されます。
薬剤師は発行された処方箋を基に、内服薬や外用薬を計数、計量調剤を行います。また、患者様が持参した薬の再分包も行っています。調剤された薬剤は最終監査を行い、処方の内容に疑義はないか、また疑義が解決されているか、処方箋の内容通りに調剤されていることを確認し、病棟へ払い出します。
ATC(自動錠剤分包機)
処方箋の発行と同時に、調剤支援システムにより、重複薬剤や相互作用などが自動的にチェックされます。処方内容に問題がある場合は、この時点で処方情報がストップし、処方箋発行など調剤が行われません。
薬剤師がその都度内容の確認を行い、必要時問い合わせを行っています。
薬袋発行機からは、薬袋に病棟名、患者名、服用時点、処方日数、薬品名、1回服用量などを印字して薬袋が発行されます。
製剤台
院内製剤とは、医師の依頼に基づき、経済性、安定性の面から市販されていない薬剤を、薬剤師が院内で調製する薬剤です。当院では69種類の院内製剤(クラスⅠ:22種類、クラスⅡ:21種類、クラスⅢ:26種類)があります。
薬品棚
当院で採用している約700種類の内服薬や外用薬がストックされています。同一銘柄で複数規格がある薬剤は配置場所を離し、さらに『複数規格あり』と記載し、取り間違えないよう注意を促しています。
計量調剤
散薬台
散薬を秤量するところです。処方箋に印字されたバーコードを専用のリーダーで読み取らせ、処方内容を呼び出します。装置瓶に貼付しているバーコードを読み取らせ、処方内容と一致した薬剤であれば、秤量することが出来ますが、間違っていると、アラーム音が鳴り、秤量することが出来ません。約100種類の散薬があります。
水薬台
水薬を秤量、軟膏を混合するところです。調剤の流れは散薬と同じです。約20種類の水薬と、約10種類の軟膏があります。また、短時間での軟膏の混合を可能にする機械も導入しております。
鑑別
患者様が持参した薬について、薬剤の現物やお薬手帳、薬剤情報提供書などの情報をもとに、薬効や用法用量、当院採用薬であるか否か、代替薬の有無を調べることを鑑別といいます。その結果を電子カルテ上で医師へ報告し、医師は鑑別結果を見て持参薬の継続、中止を決定します。
最終監査
最終監査とは、処方内容や調剤された薬剤を最終的にチェックすることを言います。用法用量が適切であるか、調剤された薬剤が間違っていないかなどを確認します。
薬品庫業務 概要
注射剤を取り扱う仕事を薬品庫業務としています。注射剤の取り揃えは、主に注射薬自動払出装置(オートアンプルディスペンサー:AAD)、通称アンプルピッカーにより機械化され、患者毎に一施行単位で自動的に取り揃えられます。監査支援システムにより投与量や投与経路、配合変化等が確認され、薬剤師は、処方箋や検査値をもとに薬剤を最終監査し、払い出しを行います。病棟への搬送は、専用のカートを利用し届けられます。
また、無菌調剤室・ハザード室があり、ここでは、取り揃えられた抗がん剤や高カロリー輸液のミキシングが行われ、調製後、各病棟・外来化学療法室へ供給されます。
注射薬の取り揃え
注射薬自動払出装置(AAD)には、バック輸液製剤やアンプル・バイアル製剤が約150種類充填されており、機械が自動的に薬剤を取り揃え、患者個人毎に、一施行毎にセットされます。
機械から出てきたトレイには、患者名や投与日が自動表示されます。薬剤の他に、投与ラベルや注射薬処方箋も一緒に添付されてきます。トレイの表示も個人情報に配慮し、自由に切り替えることができます。
注射薬剤の監査
AADで取り揃えられた薬剤を、注射薬処方箋に印字された検査値などを参照して、適正な処方か最終確認を行います。
化学療法については、レジメンオーダと呼ばれるシステムで管理しており、キャンサーボードで承認を得たプロトコールのみ使用することができ、投与量(生涯投与量)や投与間隔など管理することができます。薬剤師は、抗癌剤の投与量や投与間隔、適切なレジメン選択かどうか、副作用に対する支持療法の必要性、B型肝炎の再活性化のリスクは無いかなど多岐にわたって確認を行います。
無菌調剤室・ハザード室
抗癌剤をミキシングするためのハザード室と、高カロリー輸液などのミキシングを行うための無菌調剤室があります。どちらも無菌操作を行う場所である為、クリーンな環境に常に保たれています。
ハザード室には、安全キャビネットが2台あり、無菌調剤室にはクリーンベンチが3台あります。
調製者のさらなる安全面に配慮し、抗がん剤曝露防止のために、閉鎖式器具(CSTD)を用いてミキシングを行っています。
実績として抗癌剤のミキシングは入院・外来共に全件おこなっており、入院は約200件/月、外来約600件/月です。日曜・祝日投与するケースは少ないですが、その場合もすべて対応しています。
高カロリー輸液のミキシングは、投与する時間帯によって行っており、約50件/月ミキシングしています。
ハザード室
無菌調剤室
無菌調剤の調整風景1
無菌調剤の調整風景2
点滴センター
外来がん化学療法を受けられる患者は、点滴センターで抗がん剤の投与が行われます。
薬剤師は、抗がん剤の調製依頼のあった患者について、投与基準を満たしているかを検査値や診察記事など、電子カルテを見て確認を行います。疑義が生じた際は、医師へ疑義照会し、投与量の変更や、支持療法の追加提案などを行います。混注・投与してよいか最終確認を行い、問題が無ければ無菌調剤室にて注射剤の調製を開始します。そして、調製完了した抗がん剤を最終監査して、点滴センターの看護師へ確認しながら受け渡します。
ベッドサイドで治療スケジュールや副作用を中心に説明を行います。調剤薬局との連携にも力を入れており、調剤薬局に提出してもらうための、使用レジメン名や、現在の副作用状況等を記載した用紙を患者様へ渡しています。
品質管理業務(PET/CT)
PET/CT検査とは、がん細胞が正常細胞に比べて、より活発にブドウ糖を多く取り込む性質を利用した検査で、放射性同位元素にブドウ糖を結合させたFDGを静脈に注射して、FDGの集積する部位を機械で画像化します。この検査は、他の検査によりがん診断が確定した患者に対して、がんの「ステージ」「転移」「再発」を確認するために行います。
道南圏ではPET/CT施設は当院のみで、道外など遠方から来られる方もいらっしゃいます。
私たち薬剤師は、この検査で用いるFDGが、注射剤として使用できるかどうかを、無菌試験やエンドトキシン試験、半減期試験等の様々な品質管理試験を行って判定しています。
品質管理試験業務に携わるには、先輩薬剤師と一緒に約1ヵ月間練習を行ってから行います。写真付きのマニュアルやDVDもあるため新人薬剤師でも安心して業務を行うことができます。また、放射線被曝もほとんど無く安心して作業が行えます。
持参薬受付業務
患者様が入院予約に来られた際に、すべての服用薬の中から休薬する薬の有無を確認し、当院で定めた休薬期間に準じて、休薬する薬剤と休薬日を説明します。
例えば、抗血小板薬のバイアスピリンであれば休薬期間は7日間としているので、手術の1週間前から服用を中止するよう指導をしています。
入院当日は、持参した薬剤の確認を行い、事前に指導した休薬日が守られているか、また入院前の薬の管理状況、アドヒアランスや副作用の有無なども確認しています。把握した患者情報は、病棟担当薬剤師へ情報提供し、入院時、退院時の薬剤管理指導につなげています。
入院中に持参した薬が無くなった時、医師がその代わりの薬を処方することがあります。薬剤師はその持参薬と同じ成分、もしくは薬効が同じ薬を代替薬として提案し、医師が切り替え処方をする際の情報提供をしています。
医薬品情報業務(Drug Information;DI)
医薬品情報業務(DI業務)は、病院薬剤師として専門性を発揮すべき重要な業務です。当院では、数名の薬剤師がDI業務を担当しています。
主な業務内容は、採用医薬品のマスタ管理、医薬品情報の収集・管理・伝達・周知、医薬品に関する問い合わせへの対応、副作用報告等の安全管理です。
DI業務担当薬剤師が収集した医薬品情報は、信頼性の高い情報を選択し、専門的評価を行った上で利用します。収集した情報は、将来を考慮し汎用性の高い形式(データベース・院内ホームページ)で電子的に保管しています。保管の際には、必要とする医療従事者のニーズに合わせて加工します。
また、収集した情報は必要に応じて、該当者へ個別に伝達又は電子メールの配信、お知らせ用紙の配布等にて伝達・周知しています。
医師等からの医薬品に関する問い合わせについては、問い合わせ内容や返答の内容が分かるようにDIカードを作成し、情報の共有を目的として院内ホームページへ掲載しています。
院内における副作用発現事例については、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度に則り、医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ報告しています。
このように、情報の一元管理、データベースの構築と管理・活用等を目指して業務を行っています。